Chocolate

070708_1848_1暑かった金曜日。
用事と用事の間に時間があったので、東京ミッドタウンへ行ってみました。
はじめに覗いたサントリー美術館の『水と生きる』は、円山応挙の青楓瀑布図が8月からの展示ということなので見送り、21_21DESIGN SIGHTで開催されている『チョコレート』を観ることに。
入場料は1000円。入り口でチョコレートを1コくれて、これだけは館内で食べてもいいとのこと。ちょっとエスプリ利いてるじゃん?

ひんやりした地下の展示スペースは、チョコづくし。約30組のクリエイターが、チョコから広がるイメージを、いろいろな素材を使って自由に表現しています。まず、小さなドーム状の透明カプセルの中の一風変わったチョコ・オブジェたちが、ニヤリとさせてくれます。日本人にはなじみ深い、明治の板チョコ、アポロ、パラソルチョコなどをモチーフにしたものが多いのも、その要因でしょう。同じ意味で、愛嬌たっぷりのポッキーチョコのお人形も人気でした(私も思わずくぎづけ……)。
あと印象に残ったのは、チョコレートの包み紙をむいたみたいに、中から違う柄が現れてくる壷の連作。コートジヴォワールのカカオ農園で働く人たちの巨大なポートレイト。1日働いてもひとかたまりのチョコが買えないくらいの低賃金なんだそう。。でもみんないい顔つきしてました。
そのほか、映像ありインスタレーションあり実用品あり、単純に面白いものからじわっと奇妙な感覚を与えられるものまで。昼下がりのまったりした、でも限りある時間を過ごすには、規模も題材もちょうどよかった気がします。

今月29日までですが、機会があればみなさまも覗いてみてください。誰かとしゃべりながら観るのもきっと楽しいと思います。

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濃いコンサート

もう6月ですが、もうちょっと5月の話を。
とにかく仕事ぱつんぱつん状態でしたが、それでも多少は楽しみごとがありました。

その筆頭がキース・ジャレット・トリオ来日公演at神奈川県民ホール。
しょっぱなからピアノを奏でるキース・ジャレットの幸福感がビンビン伝わってきて、自分もすっかり幸福に。県民ホールのお客さんはおおむねマナーもいいし、とても心地よく聴けました。圧巻はアンコールの最後の"Straight No Chaser”。超高速・アヴァンギャルド・突然の幕切れ。カッコイイなんてもんじゃなかったです。二階・三階席も含め、ほとんど全員がスタンディング・オベーション。若者方面からは「うっわ~~なんじゃありゃぁぁぁ~~やっべえ~~!!!」と声が上がっていました。
本当にノーチェイサーで堪能させてもらった濃いコンサートでした。昔と比べてどうとか、言ったらキリがないんでしょうけど、私はよくわからないし、今のベストを尽くしてくれたそのことが素晴らしいと思うので、細かいことはどうでもいいです。楽しかった。また聴きたい、長生きしてほしいと思いました。

しかし、よく考えたら1カ月ぐらい前の話。タイムリー感まったくなし。。。

そしてこれは2週間ぐらい前、ぬぼーっと飛んでいた飛行船。
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飛行船ってなぜだか好き。また見たい。

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ユージローの魅力

061117_1744石原裕次郎のアルバムThe Legendary CoversⅡを聴いているこの頃。Ⅰがなかなか手に入らないので先にⅡを購入したのですが、このジャケット、とってもいい感じです。超若い頃の、やんちゃなお坊っちゃまという感じの裕次郎が、レトロなお部屋でジャズのレコードに囲まれています。手前にはチェット・ベイカーが見えますね。
さて、肝心の中身ですが、映画音楽からジャズ、ハワイアンまで。冒頭、いきなり子供の声で「シェーン、カムバーック」と来るので一瞬コケますが、素敵な大人の曲が満載です。ソフトな声でまったりと聴かせます。解説にも「レコーディングは余技を楽しむように、常に肩の力を抜いて行われていたという」とありますが、本当にどこにもよけいな力が入っていなくて、聴いているこちらもたいへんリラックスできます。
こんなふうにまとめて聴いたのは初めてですが、声って本当に人となりを表しますね。一番に浮かぶ言葉は「自然体」。何の作為もない、「オレ、この歌好きなんだよな」というつぶやきが聞こえてきそうな歌声。
根性で下積みから這い上がってきた演歌の人とか、そういう人とは対極に位置していることがとてもよくわかります。
でも、普通の人がただ自然に歌っても、いくらいい声でも、絶対に同じ魅力は出せない、そこが裕次郎の裕次郎たるゆえんでしょう。
突然ですがここで、矢作俊彦が書いた文章をちょっと引用してみます。
矢作さんが小学校時代、横浜は代官坂あたりでのことだそうです。

~~~~~

(前略)道端に置いたランドセルを跨ぐような形で、銀色に塗られた大きなコンバーティブルが停まっている。しかたなし、車の下に体半分潜り込み、やっとの思いでそれを取ると、頭上で分厚いドアが開いた。もの凄くごつい革靴ととてつもなく長い足が降りてきた。サングラスをかけた男だった。私がそこにいるのに気づくと、「オウッ」と言って、口の端で笑った。
 それだけのことだ。普通なら偶然に見かけたという程度。それが、道を歩いていたら飛行機にぶつかってしまったというほどの事件になってしまったのは、彼が石原裕次郎だったからだ。
 何故だろう、その「オウッ」が忘れられなかった。今も忘れられない。車を降りのっしのっしと去って行った背中を思い出すとワクワクした。今もワクワクする。
 数カ月後、私は彼と日活映画館の大看板で再会した。以来、二十代の半ばまで、一年に五百本以上の映画を見るような暮らしが続くのだが、それはまったく、この一瞬のためなのだ。今もって映画がつくりたい、つくりたいと呪文のように呟き続けているのも。

                               (「その名はイシハラ・ユージロー」)
~~~~~

まったくカリスマとはおそろしいものですね。「オウッ」で人を一生虜にしちゃうんですから。このエッセイは『ツーダン満塁』という本に収録されていますが、この一編がとても好きで、そのためにこの本を手放すことができません。もしかしたら私も間接的にやられちゃったのかもしれません。

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リスペクト

060907_0200一昨日、7日のことですが、「敦 山月記・名人伝」@世田谷パブリック・シアターを観てきました。構成・演出・主演、野村萬斎。行きの電車の中で原作を読み返し、準備万端。両方とも記憶していたよりもすごく短くて、舞台という形でビジュアル化するのが難しそうな内容だなーと思っていたところ……。

非常に凝っていて、なおかつ面白い演出。とくに「名人伝」は笑わせるセンスが冴えていて、さすが狂言の人という感じです。
そして、タイトルにあるように、本当の主役は作家・中島敦。冒頭、舞台の正面に掲げられる中島敦の写真とその人となりの紹介、原作の文章のほとんどそのままを、「敦」がその分身とともに語っていくという形式(これはちょっと重く感じるところがありました)、そして最後のカーテンコールでの萬斎さんの身ぶり、そうしたところから、敦に対するリスペクトの精神、そして同じ「創る人」としての共感がしっかりと伝わってきました。

「面白さ」の部分は実際に見ないとわからない点が多々あるので、ここでの説明はナシとします。
それにしても、原作のあの格調高く無駄のない文章には、あらためて感じ入りました。格調低く無駄だらけの文章をブログに垂れ流している身としては、もちろん同列になど考えてはおりませんが、おおいに我が身を振り返ってしまう、迎え酒の夜でした。

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続・プライス好み

「眠い病」とお仕事で更新できませんでしたが、27日に観てきたプライス・コレクションの感想を。

今回注目の若冲さんは、鶏もいいですが、私はそれ以上に鶴がよかったです。特に限りなくシンプルな線で描かれた水墨画、「鶴図屏風」。あの簡略化された表現にこそ日本人の感性が。そして描線の奔放でなんと美しいこと。思わずじっくりと見入ってしまいました。
とんでもない人だかりのできていた「鳥獣花木図屏風」は、技法の斬新さは確かにすごいけれど、私にとってはずっと見ていたい絵ではありませんでした。
060827_2347同じように象が描かれたものでは、長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」のほうが好き。象「のたぁ~~~」。牛「のそぉ~~~」。そこにちっちゃいカラスや子犬がちょこんとくっついて。なんというか、大陸的なおおらかさを感じさせる絵で、うちの大広間に飾ったら楽しいなあと思いました(どこにあるんだそんな大広間が)。写真は、巨大な牛に寄りかかっている子犬。二足歩行のハムスターのようにも見えますが、可愛いです。

ここに書いた以外にも素敵な絵がたくさんありました。
あと、やはり特筆すべきは展示手法。5つに区切られた展示室のうち、最後の第5室では明るさや角度の変わる照明で、一枚の屏風がどんなふうに変化していくかを見せてくれて、これはとても新鮮でした。普通の展覧会ののっぺりした照明とは違い、「朝日の中ではこんなふうなんだ」「夕暮れ時にはこう変わるんだ」というのがリアルにわかり、日常の中でこれを見ていた江戸の大名やお大尽みたいな気分を味わうことができました。
たとえば金屏風は西日に照らされて柿色になると絢爛たる美しさを見せ、銀屏風は昼間の白い光で雪原のように輝き、でも、そんなゴージャスな景色もつかの間、絶えず微妙にうつろっていくところが、なんともいいのです。心の中で「陰影礼賛!陰影礼賛!」と叫んでしまう私でした。

このコレクションの持ち主、プライス氏はこれらの絵を完璧に味わうために、自然光をちょうどよく取り入れるための庇や自動開閉式のブラインドや人工照明を備えた豪邸をお持ちです。なんと贅沢なことでしょう。たくさんお金をかけているのでしょうが、見栄のためでなく、絵のための家であるところがとても上品です。
それでいて、「エツコ&ジョー・プライスコレクションは、いわゆる「ガイジン」--日本語が片言しか話せず、公式をくりかえし詰め込むような教育しか受けていない外国人--が蒐集した絵画と工芸品のコレクションである」なんて自分で言っちゃっています。日本風の謙遜の心までお持ちのようです。
心から楽しませてもらった者のひとりとして、「あなたの大好きな絵を私たちに見せてくださってありがとう」とお礼を言いたいです。

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プライス好み

で、今日は、東京国立博物館の「プライスコレクション『「若冲と江戸絵画』展」に行ってまいりました。こちらも最終日ギリギリセーフ。当然混んでおりました。
http://jakuchu.jp/index.html

近年の若年層の体位向上には実に驚かされます。男も女もナニを食べたらあんなにニョキニョキ背が伸びるんでしょう。縦長の掛け軸の半分も見えないぞ!そのほかいろいろとストレスを感じましたが、閉館時間が近くなるとさすがにだいぶ空間ができてきて、見やすくなりました。

人込みはホントにホントに嫌いな私ですが、最終的には「行ってよかった」という思いが上回りました。

今日は眠くてもうダメなので、感想はまた後ほどアップしたいと思います。

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蓮食い人の島

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たまにおじゃまする陶器のお店のオーナー兼作家、Kさんの個展に行ってきました。
いろいろあって最終日の夕方に滑り込み。
場所は六本木の某ギャラリー。

この方は一貫して「蓮」をテーマに作陶しておられ、今回のテーマも『ロート パゴス 遠い記憶の島へ』……ギリシャ神話に出てくる、蓮を食べる人々が住む島をイメージしたものです。この島の蓮を食べた人は自分の家を忘れて、もといた国に帰りたくなくなってしまうのです。
(ということですが、記憶になかったので帰ってから『ギリシャ・ローマ神話』のページをめくったら『オデュッセイア』の部分にちゃんとありました。はるか昔に読んだため、いろいろ忘れまくっています。ああ、ただでさえ足りない教養がっ;)

さまざまな蓮たちが、ひっそりとした不思議な空間を創り出しています。くずれた壁画のかけらを並べたようなオブジェは、まるで記憶の断片そのもの。写真は、蓮の花びらのレリーフが施された薄い陶板がゆらゆら揺れる、インスタレーションです。
(これも帰ってからわかったのですが、ギャラリーのHPに載ったプロフィールによれば、これまで何度もいろいろな賞を取っておられる気鋭の作家さんだったのでした。いつもほんわかニコニコしていて、自分からそういうことおっしゃらない方なので、全然知りませんでした)

おしゃべりしているうちに、展示スペースのバルコニーで、居合わせたギター青年によるミニコンサートが始まりました。椅子も出していただき、ゆっくり鑑賞。やがて別の青年(お客さんのひとり)もおもむろにベトナムの口琴を取り出して、アドリブセッションをくりひろげる一幕も。
外に目をやれば「からすうり」が一面に生い茂り、緑のビロードのカーテンに囲まれているよう。
日が暮れるまで、涼風に吹かれながら、一粒で何度もおいしいアートな時間を過ごさせていただきました。

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「ヨロヨロン」を観る

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先週、原美術館で「ヨロヨロン」束芋展を観てきました。ヨロヨロンとは、「世論」と「ヨロヨロ」をかけた造語だそうです。
観ていない方に説明しようとしても難しいタイプのアーティストなので(というよりめんどくさい?)、頭に残っているものを羅列してみます。ある意味ネタバレですので、ご注意を。

蛾、ゴキブリ、芋虫、台所、煮えたぎる鍋、不協和音、日の丸、自殺する中高生、おばさん、おじさん、飛び下り自殺、ピストル、銭湯、髪の毛、指、皮膚、赤ん坊、お相撲さん、車掌さん、団地、アパート、血管、心臓、筋肉、神経繊維、夜の闇、波音、入れ墨、散っていく花、女子トイレ、落書き、すっぽん、水音、ランドセル、包帯、タイル……。

そーいう、「きれい」とか「さわやか」とは言い難いものたちが、ドローイングやアニメーションを使ったインスタレーション作品になって迎えてくれます。音や動きがある分、訴えかけてくるものもハンパじゃありません。
全体の感想としては、どこかあっけらかんとしていて、もや~っと後は引くけれども後味は悪くない、実に不思議な世界でした。たとえば、2、3歳の幼児がいきなりパンツを脱いでそのへんでおしっこするのを見ても、「あらま……」とは思っても、「いやらしい」とか「不潔!」とか感じないのと似ています。このたとえがいいのかどうかわかりませんが。

友人とも話しましたが、作者と同じ女のほうが、生理的に理解できる世界かもしれません。ただ、見た目が不快なものや、現実の暗い側面や、隠微な世界から目をそむけたい人はやめておいたほうがいいでしょうし、デートにもあんまり向かなそうです。あ、目黒寄生虫館とかで盛り上がれるカップルにはおすすめです(笑)。

ちなみに束芋さんは1975年生まれ。計算すると、昭和と平成をほぼ半分ずつ生きています。でも作品に色濃く漂っているのは、まぎれもない昭和の空気です。そんなところも面白いなあと思ったりします。

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バルバラとバーバレラ

タイトルはもちろん意味のない語呂合わせですけれども。

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シャンソンではバルバラなんかもとっても好きです。知性あふれるクールビューティーで、なおかつ力強さとか凄味のようなものも備えているところにひかれます。音が流れだすと、あら不思議。いつもの部屋がパリのアパルトマンに、マリンタワーがエッフェル塔に、二級河川「○川」がセーヌ河に!

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バルバラとは反対のキャラクターで殿方のハートわしづかみなのがバーバレラ。演じるジェーン・フォンダは若さ真っ盛りのピチピチで、絵に描いたようなセクシーブロンド美人です。若い頃のBBとドヌーヴと3人並べて後ろ向かせたら見分けつかないんじゃないだろうか。ロジェ・ヴァディムって実にわかりやすい男ですね~。
一応SF映画ということになっていますが、ストーリーや考証はとんでもなくいいかげん。簡単にまとめると「バーバレラがなーんも考えてなくて○乱だったおかげで宇宙が救われました♥」という、そーいうお話です。原作のフレンチコミックもこんなんなの?

でも本人の魅力に加えて、コスチュームや小道具・大道具が可愛いし、映像も美しいし、視覚的にはかなり楽しめます。たとえば宇宙船の内部がゴージャスな毛皮張りだったり、ドアにスーラの『グランドジャットの日曜日の午後』がプリントしてあったりするんですよ。
その後反戦運動やウーマンリブの闘士になったり、ワークアウトしちゃったりしたジェーンは、この頃の自分を見て何を思うんでしょう。「もーあたしのバカバカ」なんて思う時期はとっくに過ぎて、余裕で笑ってるんでしょうけど。そういえば『デブラ・ウィンガーを探して』にも出ていたはずだけど、あまり印象に残っていません。かなりさっぱりした感じの人になっていたような気もします。
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これがバーバレラの宇宙船。なんじゃこりゃって感じです。

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狂言の現在

26日、『野村万作 萬斎 狂言の現在2006』を観賞。神奈川県民ホールにて。
えーと、近いから、なんとなく行ってみました。
生で狂言を見るのは初めてだったのですが、ハデハデの歌舞伎を見慣れた目には、衣装、装置などすべてが「簡素」の一言です。
演目は『磁石』と『宗論』。冒頭で、袴姿の萬斎さんによる解説が長々と。これがとても面白くて、耳慣れない言い回しの意味とか、「座ると、そこにいないことになる」とか「話に収拾がつかなくなると、ミュージカルにして終わらせる」など、狂言のお約束を楽しく教えてもらって勉強になりました。
『磁石』は、人買いに売られそうになった男が荒唐無稽なウソをついてきりぬける話。『宗論』は、旅で出会った日蓮宗の僧と浄土宗の僧が、自分の宗派が一番だと争って最後は和解する話。人間誰しももっている欲とか、だまされやすい心理とか、独善的なところとか、そういうものを笑いに包んでスルドク突いてきます。現代では狂言というと悪い意味にばかり使われていますが、芸能としての狂言は、誰も傷つけずに役者が観客の鏡になって笑わせてみせる、とても品の良いお芝居なのですね。余談ですが、そういう意味では落語の笑いも上品ですよね。

萬斎さんは相変わらず声がよかったです。なんでもいいからしゃべっててください、というぐらい、私はこの人の声を聞いていると気持ちがいいのです。立ち姿を見ているとそれもそのはずで、体の中をスーッとまっすぐにパイプが通っていて、つまりがなく、しかも中心は揺るぎない、抽象的だけれどそういう感じです。そういう姿勢ができる人の声がイヤな声であるはずがありません。歩く姿だってもちろん美しくて(……以下延々とほめ言葉)

それからびっくりしたのは、お父さんの万作さんのチャーミングさ。なんだかそこにいるだけで面白くて、じわ~っと笑いが込み上げてくるのです。昔、志ん生もそう評されたそうですが、これが体にしみついた芸の力というものでしょう。伝統芸能を観るたびに、年を重ねてこそ咲く「花」の存在を、まざまざと見せつけられるように思います。

ということで、今日はとってもまじめな感想で終わります。

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無料のパンフレットも超シンプル。
商売っ気がないところがまたステキッ。

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